「ヒアアフター」
クリント・イーストウッド監督の最新作。
もう、氏の事を敢えて細かくご紹介するまでもないでしょうかねぇ(^^)。
ハリウッドが現代に誇る、最高にして至高の存在。
西部劇時代からを知る名優でもあり、現在においても最も著名な映画監督の一人であり。
「マジソン郡の橋」「父親たちの星条旗&硫黄島からの手紙」など、数々の名作を送り出してきた、生ける伝説。
とまぁ、ここまで書いても過言でも何でもない程の巨匠です。
そして今や老境の域に達している氏が今回取り上げたテーマは、「死」。
人類にとって、というより生きとし生けるモノ全てが直面する、唯一絶対の事象。
ある意味必然、しかしある意味禁忌のテーマに、氏がどのようなメッセージを託すのかに興味が募りチョイスしました。
ちなみにタイトルの「ヒアアフター:HEREAFTER」とは、来世、という意味らしいですw。
物語は、3つの国の、3つの出来事に直面した、3人それぞれの「死」にまつわるエピソードを軸に進みます。
イギリスの、事故により双子の兄を失い、自らを塞いでしまった少年と。
フランスの、バカンス先で死を臨死体験をした、女性人気キャスターと。
アメリカの、死者の声を聞く能力を持ち、それ故に苦悩する男の生き様と。
それぞれがオムニバス形式で、それぞれに展開していき、やがて必然であるがごとく繋がっていき…
という感じで、それぞれが「死」というテーマに対して真正面から向き合い進んでいく物語でした。
正直観た感想としては…
なるほど、西欧の方にとって「死」とはどんな定義で受け入れられているか、を感じられる作品だったとは思うのですが、
一作品としては…あまりにも淡々としたストーリーとなっていて、拍子抜けました。
特段見せ場と言うべきシーンはなく、いわゆるお約束なアクション・ラブストーリーといった展開すらなく。
ただ淡々と、粛々と物語は進み、終わりました。
「ぇ?(--;。これだけ?;;」
そんな印象。
しかし、少し深〜く考えてみると・・・
氏を以ってしても、このテーマに対して立ち入れるのはここまでが限界だったのかも。
とも思いました。
本来アメリカという国の風土が、生きるという事を謳歌する事を好み、死を語る事を忌み嫌う空気があります。
むしろ、それを意識することは死に近づいていく行為だ、と取られている風。
その中で死を直視し、それ自体に展望があるという思想は、例え物語とはいえ表現が難しいのかもしれません。
それはキリスト教という宗教の中にある「死」の定義にも、下手をすると抵触する可能性すらありますから。
そうなると、極めてナーバスなものにならざるを得なかったのかも知れません。
また広義に解釈すると、西欧文明には「魔女狩り」に代表される、閉鎖的とも言うべき暗黒の宗教史が、
確かに存在していました。それこそ様々な「死」の解釈を以って。
その歴史の中に存在している者として、このテーマを論じるのは、やはり相当に困難だったのかも。
逆に言うと、イーストウッド氏だからこそ、ここまで踏み込む事が出来たとも考えられます。
その意味では、やはり氏は巨匠にして巨人なのでしょうね(^^)。
言い換えると、改めて私自身は自分が日本人である事を幸せだなぁ、と実感しました。
宗教観としては「八百万の神」を信奉とした多神教を根幹としていて、全ての神の存在を同義に肯定的にも否定的にも
見る事に寛容な国であり、同時にその事を自由に語る事を許された国でもあり、主張も出来る。
その国の人間であることは、やはり幸せなのかもしれませんね(^^)。
ま、最後はちとお堅い話になってしまいましたが、今回の映画レポはこんな感じで〜。
ではではー^^)/。
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